僕が初めてThe Replacements(以下Mats)の曲を聴いたのは、Snuffy SmileのコンピCD”I Hope The End Is Always The Beginning”に収録されたBaggageによるカヴァー、”Can't Hardly Wait”であった。「Chelseaやthe Rutsみたいな渋味のあるイギリスのバンドみたいだ!」というのが初めて聴いたときの印象。「原曲が聴きたい」と直ぐさま鈴鹿のタワレコ(片道1.5h)へと車を走らた。”それ”が収録されたアルバムは店頭には無く、代わりに"Let It Be"なるアルバムを購入。ジャケットに惹かれたのである。あの写真、あの色使い、「これは間違いなくストリートでシンガロングだぜ(意味不明)」と確信した。高鳴る胸を抑え、車に戻った俺は毟り取るように包みを引きちぎり、エンジンをスタート、ディスクをカーステレオにぶち込んだ。拳を振り上げる準備はできている。さあ、こい!...
足下のスピーカーが、12弦ギターの軽快なストロークを歌い始めた。トボけたリズムに人を食ったようなギターリフが続く。すでに酩酊したシンガーがわめいている。しまいにマンドリンまで飛び出してしまった。握りしめた俺の拳は虚しく空を切った...。
2曲目、3曲目、少し聴いては次々と早送りしていくが、ChelseaやRutsのような曲は見付からない。それどころかハードコア・ナンバーあり、ピアノ・バラードありで掴みどころがない。「ハズレ」のワン・フレーズが脳裏をかすめた。諦めたくない。しかし、期待したサウンドでないことだけは確かであった...。
これがMatsと僕との出会いであった。今では最も憧れているバンドの一つなのだから、分からないものである。
今よりもっと若くて、お金がなく、レコードもたくさん買えなかった頃には、一枚一枚、一曲一曲大切に聴いたものだった。一度聴いてだめでも、諦めず良いと思えるまで聴いたものだった。限られたお金で月に数枚を買い、急いで帰ってライナーノーツを読みながら、メンバーの写真を眺め、一曲ずつ丁寧に聴く。これが何よりの楽しみだった。
Matsの魅力を言葉で表すのは難しい。大ヒットを飛ばすような曲もなければ、目が覚めるようなハンサムもいない。単に曲が良い、ってのもちょっと違う気がする。とにかく好きとしか言いようがない。ただMatsの曲には何度も繰り返し聴かなければ聞こえてこない”音”が隠れている。気がする。その”音”が僕の心を掴んで離さないのだ。おそらく。
現代は合理性の時代である。ネットで情報を収集、そして確認後、間違いのないものだけをカートに入れるのが主流。ハズレを引いてもまた別のボタンをクリックするだけである。御多分に漏れずこの僕もその恩恵を受けている。しかしながら、Matsの"Let It Be"はいつも僕を「そういうことじゃないんだよなぁ」なんて気分にさせるのである。
現代は合理性の時代である。ネットで情報を収集、そして確認後、間違いのないものだけをカートに入れるのが主流。ハズレを引いてもまた別のボタンをクリックするだけである。御多分に漏れずこの僕もその恩恵を受けている。しかしながら、Matsの"Let It Be"はいつも僕を「そういうことじゃないんだよなぁ」なんて気分にさせるのである。
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